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イスラエル現地からお届け
イスラエルは建国74年目の国で、かつ建国時には周辺国の反対もありました。昨年もロケット砲が飛び交う内戦があったりと、国家防衛に関しては日本とイスラエルの意識は全く異なります。
今回のロシアとウクライナの件についても、テレビのニュースで取り上げられる回数は日本のそれよりも少ない印象です。
多くの技術は軍事のために創出され、発達すると言われています。絶えず内戦の危険に瀕しているイスラエルの防衛技術は、彼らが優秀であるからというだけでなく、国の生い立ちや置かれている立場の違いから進んでいる、と思わざるをえません。
それにしても、日本のサイバー脅威に対する動きや意識の低さというのは世界的に見て問題があるというのが率直な意見です。
IWIのオフィスがあるテルアビブ中心地周辺
今回の記事は、サイバーセキュリティの技術からは少し離れ、イスラエルの「Withコロナ」の現状をお伝えしたいと思います。
今までと違う出張準備
イスラエルには過去4‐5回/年の頻度で出張をしていたので準備といってもほぼルーチン化されたことを粛々と進めるだけでした。会社の承認、チケットの手配、ホテルの予約、現地の人達への連絡と日程調整など。
しかし、今回はコロナ禍(COVID-19と言うのが英語では通じやすいです)のために、今までの手配に加え、イスラエルと乗り継ぎを行うドイツにおいて必要な書類準備のために日本出国前にすべきこと、同じく帰路で乗継ぎと日本入国の際に受ける審査のためにイスラエル出国前にすべきことがあり、一体何を準備しないとならないのかの調査から始める必要がありました。
また今回はロシアの攻撃が激化しているということもあり、フライトがキャンセルになったり、時間が変更になったりが度重なり、その度に、当初は予定通りにイスラエルに行けるのか?現地の人とのミーティングを設定したのに、約束が守れるか?を非常に心配しました。
参考のために記述すると
◇日本出国前に準備すること(2022年3月25日前後の内容です)
- 日本出国のため
・ドイツ入国前48時間以内のPCR検査実施と陰性証明書
・最後のワクチン接種から14日経過、270日以内のワクチン接種証明書 - ドイツで乗換えるため
・イスラエル入国前72時間以内のPCR検査実施と陰性証明書
・イスラエル政府が発行した入国許可の文書 - イスラエル入国のため
・イスラエル入国前72時間以内のPCR検査実施と陰性証明書
・イスラエル入国のEntry StatementへのWeb申請
・イスラエルの空港で実施されるPCR検査費支払(現地でもOK)
・COVID-19発症時にも適用される海外保険
・イスラエル政府が発行した入国許可の文書
◇イスラエル出国前に準備すること
- イスラエル出国のために
・ドイツ乗換で必要な入国48時間前のPCR検査実施と陰性証明書
・日本入国で必要な入国72時間前のPCR検査実施と陰性証明書
・ワクチン接種証明書 - ドイツで乗換えるため
・日本入国で必要な入国72時間前のPCR検査実施と陰性証明書
・ワクチン接種証明書 - 日本入国のため
・日本到着72時間前のPCR検査実施と陰性証明書
・ワクチン接種証明書
(実際には、往復ともフランクフルト経由のルフトハンザ便予定でしたが、行きのフランクフルト便がキャンセルされANA便になりました。)
という事で、今までに加えて準備を行った事項は
- 日本でのPCRテストを出発前日に予約し、検査の実施と、英語での陰性証明書発行の手配
- 日本でのワクチン接種と、接種証明書(ワクチンが有効である期間の証明)の手配
- イスラエルでのPCR検査予約、検査実施、英語での結果報告書の手配(帰国のため)
- イスラエルのEntry Statementの申請と、日本入国のためのWeb申請の調査確認
- イスラエルの空港で実施されるPCR検査費支払(現地でもOK)
- 心の準備!?
でした。因みに日本は、ドイツにおいてNon-Risk Countryに、イスラエルにおいてはOrange Country(リスクがある)に分類されています。
上記の準備事項の中でも、一番困ったのがイスラエルでのPCR検査をどの病院で受けられるかを探すことでした。
Webサイトを見てもヘブライ語でしか書いていなかったり、PCR陰性証明書を時間内に、期待した内容、言語で出して貰えるのかといったことが不安でした。これらについてはイスラエルの知人に頼み、探して貰いました。
在ドイツ日本大使館*1、ならびに在イスラエル日本大使館*2が作成したメモは非常に参考になりました。参考までに、WebサイトのURLを出典に記載しますので、興味があればご参照ください。
しかし、想定外だったのが出発前日の深夜に発生した宮城県沖を震源とする地震でした。地震の時に家にいられて良かったというのが正直な感想です。翌日の成田空港までの交通状況は心配しました。
今回の地震で災害を受けた皆様には、心よりお見舞い申し上げます。
ドイツでの乗換と、イスラエルの入国
「案ずるより産むが易し」と言いますが、ドイツでの乗換、イスラエルへの入国はまさに言い得て妙。非常に簡単でした。
ドイツの感染者数はこの時点で世界で2番目でしたが、入国の厳しさは思ったほどではなく空港ではマスクをしていない人もいました。水際対策については日本が一番厳しいかもしれません。
日本でもドイツでも飛行機への搭乗前には全てのドキュメントが用意されているか否かの確認がされますが、準備さえちゃんと行っておけば問題になることもなく、正直スムーズ過ぎて良いほうに期待外れでした。
成田で搭乗チェックイン時には、ANA便であったこともあり、ANA職員が最終目的地がドイツではなく、イスラエルと知ると、その場で資料を確認し必要書類を教えてくれて内容を確認してくれました。
ドイツではイスラエル出発便のセキュリティチェックは厳しくセキュリティゲートも何回かの検査が必要か思っていたのですがそんなことはありませんでした。勿論、他の国に比べると厳しかったですが、下記のドキュメントを確認し、通常の荷物検査を受けただけでした。
- イスラエル到着72時間以内に検査されたPCR陰性証明書
- ワクチンが有効である期間内のワクチン接種証明書
- イスラエルへのEntry Statementのコピー(入国許可証、Green Passも添付されます)
- 海外保険の特約にCOVID-19もカバーされる旨の記載
イスラエルへの入国も、思ったよりも簡単で隔離されるかもしれないとWebには記載されていますが、ちゃんと事前の手続きをしていれば入国審査と、手続きを非常に簡単に終えられます。
- 入国審査のカウンターに行く通路脇にある本人確認機で、パスポートに格納された顔と、本人確認機のカメラで撮影した顔を照合します。問題がなければBaggage Claimに行くための通過ゲートで必要となる青いチケットを出してくれます。(これは税金VAT不要のイスラエル市民ではない証明書にもなります)
- 入国審査では、先ほどの青いチケット、Green Passや入国許可証のチェックのみで通過できます。
- Baggage Claimにて成田で預けたバックをピックアップしたら、最後に入国時のPCR検査(後述)をすると、手首に(その時は)オレンジ色の紙を巻いてくれました。(夢の国で入園した際につけてくれる紙の腕輪と同じです)
という具合に、問題もなくフランクフルトからテルアビブへの飛行機搭乗と、イスラエル入国から空港外部の市中に出るまでがスムーズに進みました。それだけでなく公共交通機関のタクシーでホテルに行くことも問題ありませんでした。
非常に重要な手続きとその為の準備
イスラエル入国では事前にEntry StatementをWebで提出することが必須です。このEntry Statementでは、パスポート番号、誕生日、日本の出国日とイスラエルへの入国日、到着便関連、イスラエルでの電話番号やメールアドレス、到着時前72時間以内のPCR検査と陰性証明書、ワクチン接種証明などが聞かれます。
残念ながら日本で出して貰えるワクチン接種証明(スマホアプリも紙も)はイスラエルでは承認されていません。
従ってEntry Statementでアップロードをしても「Invalid」であると言われてしまいます。しかし、Invalidである旨のメッセージを受けたまま、最後まで入力して申請をすると、数秒で承認された旨の画面に切り替わります。
その際に、入国許可証と、1か月有効なワクチン接種証明書Green Passも同時に発行してくれます。これからイスラエルへ訪問予定の方は、これらのpdfファイルとダウンロードは、印刷しておくことをお勧めします。
入国許可証とGreen Pass
また、イスラエルでは既にレストランやイベント関連への参加において提示不要となっているGreen Passですが、入出国時には必要かもしれませんので、スマホアプリで、「green pass app Israel」で検索し、出てくるアプリをダウンロードしておき、その中に上記で発行されたGreen PassのQRコードを読み込み、登録しておくことをお勧めします。
スマホ アプリ
つまり、このEntry Statement申請が非常に重要なプロセスであり、入国する為にはこのWeb申請を滞りなく完了することが必須です。そのために下記の準備を事前に行い、かつそれらの書類も保管、印刷、帯同しておくことをお勧めします。
- イスラエル到着前72時間以内のPCR検査実施と陰性証明書
- 住んでいる市町村役所が発行するワクチン接種証明書(もちろん事前のワクチン接種が必須です)
- COVID-19もカバーされる旨が記載された海外保険証
- 帰国の航空チケット
イスラエル入国時のPCR検査
イスラエル入国時(空港到着時)には、イスラエルの市民権のある人、子供、海外の人に関わらず全員がPCR検査をうけることが必要です。
これもEntry Statement申請時に、事前支払(80シェケル)が可能ですが、到着後に登録と支払いも可能です。到着後だと、100シェケル(クレジットカード払い)あるいは115シェケル(現金払い)になります。
この到着時のPCR検査が終了すると、隔離されることなく市中に出ることができます、そして、24時間以内(私の場合は13時間程後にホテルで寝ている時)に登録したメールアドレスに結果が送られてきました。
私は陰性でしたが、陽性の人は病院にいくための救急車と治療費の自費負担が必要になります。(入国時に、その同意をすることが条件です。)
空港で入国後にあるPCRテスト会場
イスラエル市内の様子
イスラエルのルールではビル外や道路などではマスク不要、ビル内や店内ではマスク必要となっていますが、こちらの人に聞くと既に国民の半数はコロナに感染したことがあり、かつ、ワクチンを接種していることもあり、コロナに罹っても、風邪と同程度の薬が処方されたりしているようです(解熱、咳止めなど)。
現地の知人に子供がいるのですが、子供たちは感染したものの、その人は感染しなかったと言っていました。また、この1年はオンラインで学校に行っていないが、もうすぐ再開するとのことで就学児にワクチン接種をするのは厭わないという感じでした。オミクロンの次の変異種が発生しているようですが、全然動じていないので感覚的に違和感があります。
市中では殆ど多くの人がルール通りにマスクをしておらず、かといってマスクをしていても変な目で見られることもなくといった様子です。例えばスーパーの店内でも多くの人がマスクを着用しておらず、一方でルール通りにマスクを着用している人もいます。
マスクを着用することに対して、我々日本人は花粉症対策のためか全く違和感がないですが、花粉症がない(森がない)イスラエルでは、やはりマスクをするというのは病気の時であり、非感染時に着用しないことが普通のようです。
テルアビブの隣町、Herzliya Pituahの昼食風景
天候など
いつもであれば3月のこの時期には20度前後の晴天が続いており、当然今回もそうなるだろうという想定で、服は長袖シャツ、半袖のポロシャツ、そしてジャケットは不要だと思い機内での寒さ予防でパーカーだけを持っていきました。
ところが例年と異なり、この頃ではありえない寒波のために唯一のアウターであるパーカーを着て出かける毎日でした。
また、24日には嵐の影響で風雨が激しく、タクシーが捕まりませんでした。しかし、アポがあったため、歩いて向かったところ、途中で横を通った車に水たまりをはねてかけられ、ズボンはずぶ濡れになり大変な思いをしました。
26日からは寒波も去り始めて、気候も良くなり、やっと本来のテルアビブに戻ってきた印象です。このまま通常の気候に戻る頃には私は帰国してしまいますが。
その他
毎日、業務のために色々な会社を訪問しているのですが、2年前と比べるとタクシー代が高くなっていました。(時間経過のせいなのか、コロナ禍のせいなのかはわかりません。)
また、不幸にも、訪問予定をしていた人がコロナに感染してしまい、イスラエルでも日程変更や追加のミーティングが相次ぎました。また、コロナ禍で来ていなかった2年間の間に知っているお店が閉店してしまっていたり、と予定通りに進まないことが多々ありました。
知人によるとオフィスビルからもどんどん会社が移転をしているようです。しかし、Withコロナやワクチン接種が当たり前になり、経済活動が殆ど通常状態に戻ったことで、最近ではオフィスビルも満室になり空き室を探せなくなっていると言っており、またテルアビブの中心地でもオフィスビル建設がどんどんされていました。
テルアビブ中心にあるSaronaでのビル建設現場
中央に見えるのがテルアビブで一番高いと言われているビル
イスラエルでは、ファイザー製のワクチンが主流です。それは、ファイザーのCEOがユダヤ人でありネタニヤフ元首相との関係が強固であったために優先的に(高値ではあるけど)購入できたことはイスラエルでは広く知られています。
同じ理由で米国民のユダヤ人は2%のみであるにも関わらず、米国との関係が強固なのは米国経済に関わりのある主要な会社のトップや政府の要人にユダヤ人あるいは親ユダヤの人が多いことも国民にとっては周知のことのようです。
後編に続く
帰国時の注意点などは後編で述べたいと思います
日本にいるとコロナ対策に依る不便さはあるものの、あまり気に掛けることも多くないですし、まぁ仕方ないで済ませられる事ばかりだと思います。
しかし、ひとたび海外に訪問するとなると行き慣れているイスラエルでさえ色々と悩む事、困ったことが多くありました。きっと慣れていない国に行くとなるとこんなことでは済まれてないのだろう、と想像するだけで頭痛がしそうです。
日本でも関東エリアで雪が降ったり、地震の影響で節電要求が電力会社から出されたり、と大変な状況かと思います。サイバー脅威に関しては、3月24日に経産省、総務省、警察庁、NISCが共同で「現下の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化について (注意喚起)」*3を発表しています。
今回、多少なりとも皆さんのお役に立てるようイスラエルに来ています。今後渡航される方、あるいはイスラエルに興味を持っていただける方の参考になれば幸いです。
出典 (参考文献一覧)
※1 在ドイツ日本国大使館|新型コロナウイルスに関する最新情報(ドイツ)(参照日:2022-04-05)
※2 在イスラエル日本国大使館|イスラエル国内におけるPCR検査(出入国関連)について (参照日:2022-04-05)
※3 経産省、総務省、警察庁、内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター|現下の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化について (注意喚起)(参照日:2022-04-05)